株の窓口THE相場勘 ~米国大統領に出来ること~

昨晩は米国金利が上昇したことを受け、再びドル買い円売りの動きが高まり、前日112円を付けていたドル円が114円まで戻してきました。米国市場では、注目されていたゴールドマン・サックスの決算が大変良いものでしたが、今までの上昇に対する警戒感や、同日に発表されたシティの決算が悪く、NYダウは上値を抑えられた形で終えました。

今週末にはトランプ次期大統領の就任式も控えており、ここからしばらくは上にも下にも動きづらい展開になるかもしれません。実際に過去の大統領就任式前後を見てみると、米国株価は足踏み傾向にあるので、今回も例外ではないのではないでしょうか。

トランプ氏が米国大統領に就任することで政策が始まる、大統領の一声で米国の政策が始まると言うようなニュアンスの報道が目に付きますが、米国のことを調べると、そんなに簡単ではありません。米国大統領の権限で行えることというのは
・軍隊の統帥権(最高指揮権)
・一般教書演説を行うことが出来る
・議会が決めた法案に対する拒否権
です。議会が決めた法案に対する拒否権にしても、実際オバマ大統領が拒否権を行使した際に、大統領拒否権が拒否されたことは、皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

もし上院で3/5の投票数を確保できていれば、何でも思うように政策を行うことは出来ますが、トランプ氏は確保できていません。また、トランプ氏が議会での決定事項のサインを拒否したとして、議案が2/3の賛成を議会でとれれば、議会のみでもその法案を通すことが出来ますが、それも容易ではないことを考えると、今後トランプ氏が大統領であることだけで出来ることは限られてきます。

今週末の就任式後には1月末に一般教書演説(※)があります。その後100日の間にトランプ氏の経済チームは経済政策法案を作成すると思いますが、作成後には議会という強敵が待っている形です。経済政策を遂行するには具現化する党が必要になります。経済閣僚には素晴らしいメンバーが揃っているので、今後の米国に対する期待が高いのは確かだと思います。ですが、大統領権限、法案可決までの流れを見ても、簡単ではないのも実情なので、今後の米国の動き、その動きが米国企業の決算やファンダメンタルズに反映されるまでは時間も必要になってきます。

勢いがつけば、NYダウ20000ドルと言うことも可能性はゼロではないと思いますが、何も始まっていない今は、期待を持って足踏みする時期なのかもしれません。

(※)一般教書演説:米国において、大統領が連邦議会両院の議員を対象に行う演説のことで、国の現状についての大統領の見解を述べ、主要な政治課題を説明するもの