株の窓口THE相場勘 ~賃金が上昇しない理由~

日本では北朝鮮問題が報じられていますが、米国ではほとんど報じられることが少ない状態だそうです。理由は、ハリケーン『ハービー』。恐らくこれが無ければ大きく報道されていた可能性もあるかと思いますが、日本と米国ではメディアの取り上げ方の違いを感じます。

昨晩発表のあったADP雇用統計やGDPが予想を上回る結果となり、個人消費が2.3%と牽引しており、内容としても問題の無い形です。
このままの成長を続けるには税制改革を行わなければ難しいかもしれませんが、税制改革があれば、トランプ大統領やムニューシン氏が訴えている3%成長という軌道に乗る準備が出来ていると言えるのではないでしょうか。

明日はいよいよ雇用統計の発表があります。インフレ指標が上がらず、金利も上がらない中で、上がってこないとデフレの懸念が浮上する可能性も否めないだけに、雇用統計で
良い結果が出ると、サポート材料になるでしょう。金利が上昇しないことについては、フィリップス曲線(※)は、ある程度いくとインフレが上昇し始めますが、その地点がもう少し先のように見えます。今の経済状況だと、その上昇地点に到達するには時間がかかるとマーケットが見ている証なのかもしれません。

雇用者数の増加と言うよりも、時給が2.5%(前年比)で止まっています。3~4%まで上がらないと、FRBの言う期待インフレ率2%に届かないと言われています。
世界的に競争が激化している中、労働者の賃金についてはアウトソーシングもあり、人工的に上げようとしても簡単ではないのかもしれません。昔であれば、国内で完全雇用であればインフレになりましたが、国内で完全雇用かつ世界的に完全雇用でなければ賃金が
上がりにくい状況にあるのではないでしょうか。企業にとっては安い国の労働者にアウトソースすることも可能である中、価格競争を行う上でアウトソースするのは当然の選択とも言えるので、賃金上昇には世界的な完全雇用状態になるまでは難しいのかもしれません。

9月5日からは議会の再開がありますので、9月中には税制改革についての先行きが見える、米国にとっての正念場かもしれません。

北朝鮮問題があろうと、近くの脅威より米国の動向に追随しやすい日本のマーケットですから、日本でも年内は9月いっぱいが正念場かもしれません。

 

(※)フィリップス曲線:賃金変化率と失業率との対応関係を示した曲線のこと。
失業率が低下すると賃金は急速に上昇し、逆に失業率が上昇すると賃金は比較的緩やかに低下します。