株の窓口THE相場勘 ~米・雇用統計と来週の動き~

昨晩の米国市場は、NYダウに限っては好調な企業決算を支えに調子良く上昇を続けてきましたが、夏休みと言う事で、市場参加者が少なく取り残されてしまったと言うことなのか、プラスで引けたものの、最近の中では軟調な推移と取れると思います。
S&P500やナスダックは、一足先に上値が重くなっていますし、これまで支えとなっていた決算発表も終盤ですので、下支えとなるものがなくなってくるのですが、地合が強いので高値圏に留まってはいますが、やはり不安材料が無いわけではないと言うことにマーケットが気付いたというところでしょうか。

最近の米国の経済指標は、かなりばらつきがあるのですが、昨晩発表のあったISM非製造業指数が予想よりも大きく下回ったことで、発表を受けてドル安・円高が一気に進行する形となりました。

これまで、景況感指数(ソフト指数)に関しては強いものが多く、それだけ市場の雰囲気は強かったのですが、足元の景気の実態を反映するような数字は弱いものが多かったのですが、昨晩は景況感指数であるISMサービス指数が落ち込んだと言うことで、警戒感が出てきたように思えます。米国の経済は、今の株高進行を支えるほど、状況が良いわけではなく、このことは長期金利やドルの動きを見ても明らかですので、株価とのギャップについてマーケットが注意を払いつつあるのかもしれません。

また、所得統計の改定が行われ、貯蓄率が下がっていることが明らかになりました。給与が上がらず貯蓄を切り崩して消費に使っていたというシナリオが出始めたと言うことで、米経済に対して不透明感が出てきています。賃金が上がらず、インフレにもつながらず悪循環になっています。今晩、雇用統計の発表がありますが、雇用が増加するのは織込み済みであり、賃金の伸びがどの程度になるのか、前月に引き続き予想を下回る低い伸びに留まるのであれば、ドル安・長期金利の低下が更に進む可能性が高く、後は株式市場がどのような反応を見せるのかということになりそうです。

このところ、雇用統計については、非農業部門雇用者数は議論に上がることが多いようですが、賃金の伸びについては、対前年同月比の賃金の上昇が2.4~2.5まで落ちてきています。昨年の12月は2.85近くまであったのですが、その後、腰折れ傾向と言えるでしょう。この辺りを見ると、賃金の伸びについては、景気が回復し、景気が良い時には3%~4%前年比上昇しても良いのですが、2%程度で留まっているということは低水準。
新たな経済実態を反映しているものなのか、実際には雇用はそれほど良いものでは無いのか、議論の残るところではありますが、株式市場はこれまで上昇してきていますので、このギャップをどのように回復していくかということになりそうです。
これまでの上昇に意味が無いわけではないでしょうから、何か新たな材料が出てくれば、このまま今の水準に留まることもあるかと思いますが、少なくともNYダウについてはペースの速さが否めないので、価格調整が起きる可能性は高いと思いますが、調整の幅に関しては何とも言えません。調整の大きさについてが、来週以降の注目点になるのではないでしょうか。